こんにちは!三重県菰野町に拠点を置くデザイン制作会社、エコムクリエーションです。
私たちは、地域に根ざしたデザイン制作会社として、様々な企業のブランドイメージ向上や、顧客体験の向上に貢献しています。
さて、今回のブログ記事では、私たちがお手伝いさせていただいた「いなべ阿下喜ベース(あげき温泉)」のリブランディングプロジェクトについてご紹介します。




CONTENTS
はじめに - 自己紹介とプロジェクト概要
いなべ市にある「あげき温泉」は、以前から「あじさいの里」として地元の皆さんに長く愛されてきた温泉です。2024年4月、株式会社Kii company(旧株式会社旅する温泉道場)様により、温泉・ホテル・サウナ・食事処を備えた複合施設「いなべ阿下喜ベース」としてリニューアルオープンしました。
このリニューアルにあたり、当社は、ロゴ制作、施設サイン制作、ウェブサイト制作を担当させていただきました。
本記事では、制作の裏側やデザインに込めた想い、そして施設の魅力を、デザイナーの視点からご紹介します。
この記事を読むことで得られること
- あげき温泉の新たな魅力を知ることができます。
- ロゴや施設サイン、ウェブサイトのデザインに込められた意図を理解できます。
- エコムクリエーションのデザイン制作に対する考え方を知ることができます。
- デザイン制作を依頼する際のヒントを得ることができます。
こんな人におすすめ
- デザイン制作を検討している方
- あげき温泉に興味がある方
- いなべ市、菰野町などの地域の方
ぜひ最後までお読みください!
あげき温泉に込められた想い - ワークショップ
今回のリブランディングプロジェクトでは、「あげき温泉とはどんな施設か」を深く理解し、デザインのイメージを共有するため、ワークショップを開催しました。
参加者は、株式会社Kii company様や、施設の設計を担当する株式会社プラネットワークス様、そしてデザイン制作を担当する当社のスタッフです。
ワークショップ開催の目的

ワークショップでは、参加者全員で「あげき温泉の新たなクリエイティブ」に関するデザインイメージを共有することを目的としました。
多くの方が関わるプロジェクトにおいては、関係者が発注者の意図を正確に理解することが、プロジェクトを円滑に進める上で重要です。
デザインのイメージは、各々が頭の中に持つ抽象的なものなので、プロジェクト担当者であっても、発注者の意図を完全に把握することは容易ではありません。
そこで、今回のワークショップでは、株式会社Kii companyのプロジェクト担当者様をはじめ、デザイナーなど、参加者全員がそれぞれのイメージを出し合い、共有することで、認識の齟齬をなくし、共通のイメージを作り上げていくことを目指しました。
ワークショップ当日
ワークショップは、参加者全員で「こんな施設にしたい」というイメージを黄色の付箋に、「こんな施設だったら嫌だ」というイメージを水色の付箋に書き出すことからスタートしました。
当日は、活気あふれる雰囲気の中、参加者が積極的に意見を交換しながらワークショップが進みました。ファシリテーターである当社スタッフが中心となり、参加者の皆様に「こんな施設にしたい」「こんな施設だったら嫌だ」という2つの視点から、自由に言葉を書き出していただきました。

書き出した言葉は、以下の3つのカテゴリに分類しました。
- 情緒的価値
施設の雰囲気やお客様からの印象など、人が感じる情緒的な価値
(例:「落ち着く」「地元民に愛される」「時間を忘れてくつろげる」) - 機能的価値
施設の使い勝手や清潔さなど、機能面に関する価値
(例:「安全」「おふろとカフェ」「ご飯が美味しい」) - 事実や属性
業態、アクセス、広さなど、事実をベースにした事項
(例:「自然」「夜も営業している」)
「こんな施設だったら嫌だ」という意見では、例えば以下のようなものがありました。
- 情緒的価値
「長居できない」「敷居が高い」 - 機能的価値
「古い」「コスパ重視」 - 事実や属性
「日常的」
どのカテゴリに分類すべきか迷う意見もありましたが、ファシリテーターが参加者の意図を丁寧に聞き取り、柔軟に対応することで、それぞれの考えを理解し合い、一体感のあるワークショップとなりました。
続いて、書き出した言葉から連想されるイメージに近い画像を各自で集め、イメージボードを作成しました。

言葉だけでは解釈に個人差が出やすいものですが、画像を組み合わせることで、共通認識を持ちやすくなります。
例えば、「レトロな温泉」という言葉一つをとっても「平成初期のサウナ」をイメージする人もいれば、「昭和の銭湯」をイメージする人もいるでしょう。
このように、言葉から想起されるイメージは人それぞれ異なるため、画像を共有することで、言葉の曖昧さを解消し、より深いレベルでイメージを共有することができます。
象徴をかたちにする - ロゴデザイン
イメージボードの作成
ワークショップの結果を踏まえ、いよいよロゴ制作に着手しました。
まずは、プロジェクトを担当するディレクターとデザイナーが、ワークショップで抽出されたキーワードの中から、デザインに落とし込むべき要素を厳選しました。
抽出されたキーワードの例:
- 手垢感、手作り感、様々なサービスの融合
- 賑わい感、多様な人々が集まる雰囲気
- サウナ、お風呂、ワーク、食事、家族
次に、これらのキーワードからイメージを膨らませ、施設の理想像を言葉にしました。当時作成したイメージボードには、こんな言葉が残っています。
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気のおけないコミュニケーション、空間。
違う目的の人が普通に行き交う場。
それがかつての、商店街や銭湯ではないか。
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さらに、言葉から連想される画像を集めたイメージボードを作成し、具体的なデザインの方向性を明確にしていきました。

市場調査
そして今回は、ロゴ制作と並行して、市場調査を実施。
愛知・岐阜・三重にある温泉施設や、いなべ市内の類似施設のロゴデザインとネーミングを調査し、それぞれの印象を比較検討することで、あげき温泉のロゴを差別化するための資料としました。

初稿の制作
作成したイメージボードと市場調査の結果をもとに、ロゴの原型となる案を手書きで書き出していきます。
当初はまだ施設名が確定していなかったので、「上木の湯」という仮の名称で制作を進めました。
80個ほど書き出した手書きのデザインの中から、理想のイメージに近い3案を株式会社Kii company様に選んでいただき、ロゴの大まかな方向性を決定しました。

次に、選出された3案をもとに、具体的なロゴデザイン案を制作します。
初稿として提案したのは、A案・B案・C案の3つ。それぞれのコンセプトは以下の通りです。
A案:
あげき温泉の4つの大きなサービスである「温浴」「サウナ」「食事」「宿泊」のを山のモチーフに見立てて表現しました。それぞれが集まり、人やサービスの温度(温もり)を作るという想いを込めています。

B案:
こちらも「温浴」「サウナ」「食事」「宿泊」を山のモチーフとして表現しています。4つのサービスがそれぞれがつながり合いながら、温泉の湯気に漂って上へ上へと昇っていく上昇思考なイメージを入れ込んでいます。

C案:
サウナ、温浴双方に共通する「ゆるむ」という状態をモチーフに落とし込みました。普段は山のようにどっしりと気を張っている方も、上木温泉で体を温めてゆるゆるになって休むというイメージです。

初稿の提案を通して、株式会社Kii company様からは「山のような、三角の形がいいね」という嬉しいお言葉をいただき、C案をベースにデザインを調整することになりました。
「ゆるむ」というイメージはそのままに、山並みを感じさせるデザインへと進化。温泉マークを山のふもとに配置することで、温浴施設であることがひと目でわかるように工夫しました。
ロゴを見るだけで山辺の温泉であることが伝わるよう、いなべらしさも盛り込んでいます。

さらに、大きな看板や印刷物にロゴマークを掲載する場合を想定し、デザインの微調整を行いました。
この時点で、ロゴマークを切り抜いたデザインの看板を施設の壁に設置することを想定していました。マークの裏側からライトを当て、陰影が美しく浮かび上がるような看板です。

提案したデザインをそのまま大きくすると、山のモチーフのかすれた穴の部分が大きくなり、印象が変わってしまいます。そこで、かすれ具合を調整し、大きなサイズに対応できるロゴを新たに作成しました。かすれて穴が開いている部分を細かくすることで、ライトを当てると、光の漏れや影が美しくなります。


また、ロゴを小さいサイズで使用する場合も想定しました。
最小サイズは横幅3cm程度であると考えましたが、SNSアイコンなど、より小さな表示状況での使用も考慮し、特例仕様も用意しました。横幅3cm以下で使用することを想定した特例使用は、かすれをなくし、ロゴタイプをシンプルにしています。

施設名の決定
このころに、正式な施設の名称が決定しました。施設全体を「いなべ阿下喜ベース」とし、温泉は「あげき温泉」、ホテルは「AGEKI BASE HOTEL」です。
そこで、「あげき温泉」と並行して「いなべ阿下喜ベース」や「AGEKI BASE HOTEL」のロゴ制作を進めました。
3つのロゴを並べて表示することも想定。並べたときに違和感がなく、同じ施設だと感じられるように設計しています。
大きなサイズでロゴを並べて使用したときに、ばらつきが出ないか確認したり、他の2施設と雰囲気を合わせるため、あげき温泉の文字に柔らかい印象をもたせたりと、デザインの微調整を行いました。

いなべ阿下喜ベースのロゴと、施設内のあげき温泉、AGEKI BASE HOTEL、上木食堂のロゴを並べて確認。
施設を彩る - サイン制作
ロゴに続き、施設サインの制作に取り組みました。施設サインとは、お客様が施設内で快適に過ごせるよう、目的地までご案内する道標です。例えば、温泉、休憩所、トイレ、駐車場などの場所を、一目で認識できるよう配置する案内表示のことを指します。

図面と、現場での確認をもとにしたサイン計画
今回のプロジェクトでは、施設の構造図をもとに、設計事務所と連携を取りながら、サインの最適な配置計画を練りました。具体的には、施設に訪れるお客様の動線を考慮し、どの場所にどのようなサインが必要か、細部にわたり検討を重ねました。

建設中の現場にも足を運び、実際の空間でサインの位置や高さ、見え方を検証しました。図面だけでは把握しきれない細かな部分も、現場で確認するとイメージがしやすくなります。現地を訪れることで、精度の高いサイン計画を目指しました。
また、案内板の厚みや、素材や塗料の選定など、サイン自体の構造にもこだわりました。設置する環境に適した素材で、温泉施設の雰囲気に調和するデザイン、そしてお客様にとって分かりやすいデザインを追求しました。




最終入稿の前には原寸大でプリントアウトし、株式会社Kii company様と一緒に、実際の見え方を確認しました。また、建設中の現場でも施工担当者に最終的な指示出しを行い、イメージ通りのサインが完成するよう、細心の注意を払いました。


ロゴの「ゆるむ」要素を反映した、施設サイン
施設サインは、ロゴのイメージを活かして制作しています。
「ゆるむ」という施設のコンセプトをもとに、ロゴに取り入れた、湯気や波のような曲線を施設サインにも継承し、施設全体の統一感を高めました。

情報を届ける - ウェブサイト制作
次に、施設の顔となるウェブサイトを制作しました。ティザーサイトと、本サイトの2種類のウェブサイトです。

ティザーサイトの制作
ティザーサイトは、施設のオープン前に期間限定で公開され、情報を告知し期待感を高めるためのものです。
私たちは、施設の建設と並行してティザーサイトの制作を進めました。しかし、当時は施設がまだ完成していなかったので、施設をイメージできる写真などの素材が不足していました。
完成予定図を描いたイラストを使用することも検討しましたが、ワークショップで得られた情報をもとに、いなべ市の自然や、阿下喜の街並みが施設の重要な要素になると考え、実際に現地へ足を運び撮影を行いました。




ティザーサイトに写真を使用することで、自然や阿下喜という地域を活かした「いなべ阿下喜ベース」ならではの魅力が伝えられたと思います。
また、随所に温泉の湯気のような、白いふわふわとしたモチーフを導入。湯気の向こうに何かが隠れているようなワクワク感と、新しい施設の完成が楽しみになる演出をしています。
本サイトの制作
本サイトは、施設のオープンからずっと使用するウェブサイトです。そのため、施設のブランドイメージをしっかりと反映したサイトであり、かつ、お客様にとって情報を得やすいサイトになるよう設計しました。

本サイト全体のデザインコンセプトは「あげき温泉を起点に、阿下喜・いなべ全体を『沸かす』」です。
湯気で隠されていた何かがいよいよ明かされる、というイメージで、ファーストビューには、湯気のようなモチーフが晴れて、施設が現れる動きを取り入れました。
また背景でも、湯気のモチーフがゆらゆらとうごめき、温泉のワクワクする感じや、暖かくほっこりするイメージを演出しています。この動きは、デザイナーとエンジニアがやりとりを重ねて調整し、訪れた人が心地良く感じられるようこだわりました。

特に、以下の点に力を入れています。
・宿泊予約や問い合わせがスムーズにできる導線設計
・最新の情報が見つけやすいこと
・施設の魅力や概要がひと目で分かること
・いなべ市や阿下喜の魅力をたっぷり伝えること
本サイトは好評で、「ホームページの雰囲気が良かったから来ました」というようなレビューも見つけて嬉しく思っています。
当社のデザイン制作について

あげき温泉は、地元三重県の方はもちろん、遠方からもたくさんのお客様にお越しいただく人気施設になり、当社としても本当に嬉しい限りです。
今回のような、企画段階からお手伝いさせていただくプロジェクトは、関わる人も多く、制作内容も多岐に渡るので、調整が大変な場面もあります。
しかし、私たちは、今回に限らず、お客様とできるだけ密にコミュニケーションを取りながら、一緒にゴールを目指すことを大切にしています。「発注者と業者」というよりも、まるでチームメイトのように、デザインの力で事業をサポートさせていただけたら嬉しいです。
いなべ阿下喜ベースのブランドデザイン制作物一覧
当社が制作した、いなべ阿下喜ベースのブランドデザイン制作物をまとめました。
いなべ阿下喜ベースについて
いなべ阿下喜ベースは、温泉・ホテル・サウナ・食事処を備えた複合施設です。
詳細はいなべ阿下喜ベースのHPやInstagramをご確認ください。

いなベ阿下喜ベース
三重県いなべ市北勢町阿下喜788
HP:https://inabe-ageki-base.com
Instagram:あげき温泉https://www.instagram.com/ofurocafeageki/
新上木食堂 https://www.instagram.com/shin_ageki_syokudou/
X:あげき温泉 https://x.com/ofurocafeageki