fbpx

【TOJ2019 いなべステージ】イラストレーターがキービジュアルに込めた想い

こんにちは。エンジニアの山岡です。今回はインタビュワーとして記事をお届けいたします。

日本を代表する自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」

2019年5月21日(火)、三重県いなべ市にて、今年で5回目となるツアー・オブ・ジャパンいなべステージが開催される。

ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)は、国内8カ所を会場として巡り行われる自転車ロードレース。会場は堺から始まり、京都、いなべ、美濃、南信州、富士山、伊豆、東京と順に開催される。この各会場を「○○ステージ」と呼ぶ。

Wikipediaによると、

ツアー・オブ・ジャパン(Tour of Japan、略称TOJ)は、毎年5月に日本で行われる自転車ロードレース大会。主催は自転車月間推進協議会。自転車月間(5月)における最大のイベントとして開催される。

(中略)

日本を代表するステージ制ロードレース大会の一つ。UCIアジアツアーに組みこまれていて、2014年現在のアジアツアーでのレースグレードは2.1(ステージレース・クラス1カテゴリー)。

(中略)

ツアー・オブ・ジャパンは8日間の日程で行われる。

Wikipedia - ツアー・オブ・ジャパン

そして実は、今回の「いなべステージ」の広告デザインは弊社エコクリが制作させて頂くことになった。そしてポスターやチラシ等の各種広告が公開後、メインで使用したイラストが「背景をよく見たら凄いよ」とSNSなど一部で話題になっている。

TOJ2019いなべステージのポスター、チラシ、観戦マップ

そこで、キービジュアルを描いたイラストレーターの濱口由佳(弊社所属)に詳しく話を聞いてみることにした。

多様な登場人物が熱い声援を送る

イラストレーター濱口由佳(エコクリ所属)

「街ぐるみで開催されるいなべステージ。街全体が一体となっていることがわかるように市民にスポットを当てたイラストにしました。」

そんな想いで描く濱口が表現したのが今回のキービジュアルだ。

年齢や性別を問わず様々な市民の方がレーサー達をぐるりと囲い腕を振り上げて応援している。選手の近くを囲うように声援を送るのは、当日応援に来てくれる「ピンクの帽子が可愛い幼稚園児」だ。

そして隅々まで見渡すと、人だけでなく動物やキャラクター達も市民と一緒に応援している事に気づく。

左下には「これからのいなべ牛を担う」"いなべ牛"の「おちゃみちゃん」。中央やや右側にはゆるキャラ「うめぼ〜や」、その隣には非公式キャラクター「アゲッキー」がいると教えてくれた。しかもアゲッキーは毎年TOJに姿を現すとのこと。"いなべ"と書かれたのぼりを持っている方が「アゲッキー」だ。別名「阿下喜の妖精」。妖精よろしくいなべ市民も「アゲッキー」の事を見たことがないし、実はよく知らない、らしい……見かけたらラッキー!! 写真を撮ろう。

いなべ市の特徴を盛り込んだやわらかな景色にも注目

さらに周りを見ると、いなべ市の特徴や観光スポットが随所に配されている点にも注目だ。

北勢線と梅林公園の梅

カラフルな三角テントは雑誌GARVY(ガルヴィ)の人気ランキングで西日本1位に選ばれた「青川峡キャンピングパーク」。(GARVY 2019年4月号)

黄色ボディカラーにオレンジのラインが可愛らしい電車は「三岐鉄道 北勢線」。ナローゲージと呼ばれる日本にたった3事業者しか残っていない電車のため、線路幅が通常よりもかなり狭く(線路幅762mm)、それに伴い列車内も小さめで、ベンチシートに座ると足が当たるぐらいのサイズ感だ。地元では通学などでよく利用されている。いなべステージは、この北勢線 阿下喜駅からスタートする。

そして走行距離127kmを走破してフィニッシュするのは、梅林公園(いなべ市農業公園)だ。イラスト前景に配置されているちょっと変わった梅。これは梅林公園で見ることができる紅白2色の花をつける珍しい品種「思いのまま」を描き入れた。

「いなべステージは梅林公園の中を通るコースになっていて、坂をぐーーーっとかけあがってくるイメージで描きました。」(濱口)

あえて画用紙に手書き。デジタル主体の時流に反しての挑戦

特に苦労したポイントは、「選手の気迫溢れる臨場感を出すこと」だったと語る。さらに観客の表情をひとりひとり変えており、「それぞれに感情を込めて書くのが大変」だったという。

何が大変かというと、実はデジタル描画・デジタル彩色ではなく、キービジュアルのイラストはすべて画用紙に手書きされたものなのだ。すべてと言ってしまうと語弊があるが、イラストに合成されているのは、前景の梅(これも同様に手書き)とタイトル等の文字だけである。

「デジタルだと消したり移動できる」のだが、「手書きだと清書は1回」なのが難しいところ。しかも濱口は、「修正液は使いたくない。」というポリシーだ。「それが醍醐味ではあるんだけど。」と本人は付け加えたが、後から修正することが容易になったデジタル主体の現代において、あえてフルにアナログな手書きを選択した彼女の挑戦はあっぱれである。

一体どれだけの登場人物を描き込んだのだろうか。実はこのイラストは、様々な広告媒体に対応できるようポスターからは見えないが、横方向にもっとイラストが続いている。「もっと大勢の人がいるんです。」と教えてくれたが、願わくば多くの人の目に触れて欲しいと筆者は思った。

最後に

ここまで話を聞かせてもらって改めて思うのは、テーマの深堀りだ。ただしこれはイラストレーターだけの話ではなく、デザイン全体を統括するアートディレクターや成果物に落とし込むデザイナーにも必要な能力でもある。本稿では詳しく触れないが、飛び込んでくる様なタイトル・開催日等のテキストは臨場感を演出しているし、中央に配置されたキャッチコピー、"この日、世界のスピードに湧き上がる。"は普段自転車に関心のない層にも「一度観戦に行ってみよう」と行動を喚起させる力がある。

それでもやはり印象を決定づけるのはキービジュアルだ。TOJいなべステージで採用した濱口の一枚絵は、ただ地方が舞台の自転車ロードレースを描いたイラストではなく、入念なリサーチといなべ市への優しい想いで描かれたハートフルな絵画だった。

「当日は私も応援に行きます。選手のみなさんが無事にゴールしてくれたら嬉しいです。」(濱口)

2019ツアー・オブ・ジャパン いなべステージは2019年5月21日(火)開催。公式サイトの情報をチェックして、当日は是非観戦に足を運んでもらいたい。その後は阿下喜温泉や最近オープンした"にぎわいの森"など、いなべ市観光もお忘れなく!

関連情報