こんにちは!イラスト担当 濱口でございます(*u*)/
前回「レオナルド・ダ・ヴィンチへの近道」で、レオナルドの『モナ・リザ』を題材にあげましたが、今回はレオナルドとも交友があったとされる、筆者が尊敬してやまないアルブレヒト・デューラーが主人公!
イケメン、アルブレヒト・デューラーの『犀(サイ)』を題材に彼が16世紀の人々にかけた魔法を紐解きます。
CONTENTS
イケメン!?アルブレヒト・デューラー
本題に入る前に、みなさんはアルブレヒト・デューラーという画家をご存知でしょうか?デュラーは1471年〜1528年のドイツ ルネサンス期を代表する画家の一人です。
彼は卓越した描写技術と観察力をもっていました。彼の作品群の中でも、ウィーンのアルベルティーナ美術館にある『野うさぎ』・同美術館にある『祈る手』などは彼の高い描写力を知ることができる作品です。
想像力と超絶技巧のたまもの
こちらは、1515年にデューラーにより制作された『犀(サイ)』を描いた作品です。こちらもすごい描写力!!…ん?んん??
このサイ、みなさんはどう思われましたか?
実物や動画または画像でサイの姿を見たことのある人は、あれれ?と思われたのではないでしょうか?
描写力があるがゆえの誤解
想像してください、時は16世紀です。
インターネット、ましてや写真さえ存在しなかった時代に、当時の人たちはデューラーのあの!デューラーの描くリアルな『犀(サイ)』を、本当の姿として信じました。しかも瞬く間にベストセラーとなり、多くの人を魅了したのです!
(これがサイか〜とか言っていたのでしょうか。)
オリジナルの極み
ですが、みなさまお気づきのようにこの作品、実物とは違っています。
デューラーはこの作品を、実物を見ることなく描きます。この作品は、ポルトガル人画家が写生したスケッチとサイの特徴が書かれた書簡を読み、総合してデューラー自身の『犀(サイ)』を作り上げたと言われています。
(参考文献:『サイと一角獣』 ベルトルト・ラウファー著 武田雅哉訳 博品社刊)
想像力?描写力?それとも…
時を同じくして別の画家によって描かれた、実在のサイにより近い木版画が存在します。しかし、サイをより近い形で描かれたこの作品は、デューラーの細部まで描き込まれた描写によるリアリティーには勝てませんでした。
人を納得させるほどの想像力
デューラーの凄さは技巧だけではありませんでした。
技巧に加えて、限られた情報からの想像力がすごかった。
デューラーの絵に共通して言えるのは、その絵から周りの空気感や対象の心情までが読み取れること。
この想像力こそがデューラーとブルクマイアーの差を生み出したのでしょう。
デューラーからの啓示
デザインやイラストは、依頼主の気持ちを理解できた時、相手の方にとって最善のものができます。
デューラーの『犀(サイ)』は限られた情報から制作されました。これは、デューラーの観察力と想像力、そしてそれを形にするための技術力と表現力が結集した作品です。
力強く凛とした佇まい。デューラーの『犀(サイ)』こそが多くの人が書簡で読み、人々が待ち望んだ「サイ」の姿そのものだったのはないでしょうか。
まとめ。
提示されたものが本物と違っていても、それが美しく説得力のあるものであったなら、もはやそれは真実。(意図的にウソついちゃいけませんが!)
このデューラーの『犀(サイ)』は読み取る力の威力を現代の私たちに教えてくれます。
さあ、次につづくのは…あなたです!